お笑いを見に行く

私は漫才や新喜劇を見に行ったことがない。なんばグランド花月(=お笑いが行われるホール、略してNGK)にかなり近い所に住んでいるし、なんば駅周辺は一応知っているし、新喜劇はよくみてたし、隠れゲラだし、お笑いは好きなのに、お笑いの実物を見に行ったことがない。ここに住んでいると、芸人が身近に感じられるし、なんなら好きなタイプはと聞かれると面白い人と言いたいがそうすると相手が無理矢理笑かそうとする恐れがあるので、そうならないため優しい人などと言いごまかすぐらいだ。

住んでいるところから電車で20分くらいで着き、かつ学習塾のためよく通っていたし、よく遊んでいた場所にお笑いの劇場があるにも関わらず、そしてお笑いはどちらかと言えば好きなはずなのに、なぜか見に行ったことがなかった。

難波。NMB48NMBがここである。

長年の夢を叶えるべくなんばグランド花月に行った。一人で。
一日に3回くらい公演があるらしく、だいたい普通は何組かのコンビが漫才+落語家の落語+新喜劇というセットがお昼などにあり、たまに夜に違う趣旨で漫才だけの公演、あるいは一組のコンビが延々喋る公演、また芸人の有志達が変わったことをするなど、本当に多様だ。
私が行ったのは、「漫才三昧」。漫才三昧は何回も公演があるらしい。


いざNGK

南海通りという商店街をゆき、ゲーセンを越えた辺りで右へ曲がると、開け、左になんばグランド花月。芸人をもじったお菓子が売っているお店や、ラーメン屋があり、花月の前ではキャラクター化した芸人の着ぐるみがある。そして、芸人の声がマイクを通して聞こえて、たぶん行き交う人にチケットを薦めている、どこに声の主がいるのか分からない。誰?生きのいい声がするのだが。でも探してたら「そこのお姉さん」と呼ばれそうな気がしたので、そそくさと2階のホールへ向かう。

ネットでチケットを取ったとき、空席:◎だったので、平日だから空いているのか、と思ったが、大行列をなしていた。家族や子供連れ、そしてカップルだった。ホールの側で映画館の売店みたいなのがある。そこでポテトなど美味しそうなものが売られていたが、さすがに恥ずかし過ぎるので買わない。腹減った。誰か連れてくればよかった。

中へ入る。意外にテレビでみるより狭い。舞台との距離は近い。そして私の席は
結構前だった。こんな近くでテレビで見たことしかない芸人を見れるとは幸せだった。前から十何行目、一番左に座った。
横にカップルが座り、しかも開演5分くらいまで前の列に誰一人座らなかったので、なんとなく気まずかった。しかも彼氏の方が一人で堂々と座る私を見、緊張しながら横に座った。とりあえずホール横でもらった公演のチラシ5枚をじっと見ることを3回ぐらいした。


開幕。

と思いきや、前説の芸人がやってくる。男女コンビ。スーツのお兄さんと、緑の着物のお姉さん。どちらもすっごい声が通り、響き渡るので、なかなか気持ちがよかった。お兄さんは笑わせようとするのだが、噛んだり、観客がまだ笑う態勢じゃないのか、中途半端にウケ、発言するごとに少しずつ顔を赤らめる。お兄さんより一回り若いお姉さんはそんなの構わず、声がとても通る。そして特技のけん玉で最後拍手の練習が終わる。彼らの必死に盛り上げようとする計らいにより、いくぶんか場は温まり、和んだ。じゃじゃ馬というコンビらしい。ありがたい。

そして、始まる。舞台は奥行きが広く、かなりデカい。でもマイクは舞台のいっちばん前の中央に伸びる。幕が下がっても被らないくらいの、一歩歩くと客席に落ちるところにある。芸人たちは袖から「どうもー」と手を叩きながら、そこへたどり着く。どのコンビも、有名なのもあまり知らないのも、ベテランも若手も、冗談抜きで面白かった。初めて見に行ったからなのか、意外と差はないと思った。私は最初からずっと笑いっぱなしで、最後の方は酸欠で頭に血が回らなかったのか、集中できなくなってしまった。だから覚えていない。でも笑い声の絶えない100分だった。横の男にゲラと思われるのが気がかりだが。

終わって、さっとホールを出る。さっき出てたスーパーマラドーナのメガネの方が、チケットの束を持って客に声をかけていた。M-1の決戦一回戦で負けて、この人がヘラヘラしてたら、相方がハラハラ、すっごい悔しそうにしてたのを覚えている。「勝たなあかんねん」とか言っていた。がんばってほしい。

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100分笑うというのは、最近運動不足であった私にとっては一種のエクササイズであり、体が軽くなったのだろうか、なんば駅までかなりのスピードの歩行をしていた。なんか、今年一年間頑張れる元気をもらった。お笑いって最高だ。