奈美さん

もう新年度も始まるし新しい自分を準備しておきたいなあ、ショートの茶髪にしたりなあと思っていたところなので

バッサリ切ろうと。

なんなら佐藤栞里にでもなるぜ
という心構えでサロンへ行った
(なれないが)










久しぶりに奈美さんと会った。

実は奈美さんはファッションセンスが高すぎて、なかなかしゃべりにくい。話始めたとたん、こちらがダサすぎて場違いなんじゃないかと自負する。いつもである。よくないことだと思うが、そのためいつも敬遠してカットをためらってしまう。
話が弾んだ頃、手のひらで転がされている。私は奈美さんに溶かされてゆく。温められて、いい色を出せる気がする。でもそれは奈美さんと美容師さんの作戦なのだ。ほぼメイクをせずすっぴんで殺風景な奈美さん。それでいて存在感がある。この人は味を出そうとする、旨みを引き出そうとする、その人のカラーをどこまで髪型で表現できるか。
奈美さんはキレイだ。一番綺麗に映えていたのは夜、大きな提灯型の照明に下からぼんやり照らされていたときだ。外面に接する壁が一面ガラス張りで明かりから遠ざかると真っ暗だった。ここに住んでいてよかった、いいものが見れたと思った。大人になったらカクテルを一緒に夜飲みたい。


と、そうこう考えるうちに
キノコみたいな頭になっていた。
ちょっと自信が付いてきた。
支払いを済ませると美容師から、春先にサロンが移転することを聞かされた。


奈美さんともう一度世間話でもするためにじきに行こうか。

家に帰ると、人生で初めて(赤ちゃん以来)ショートにしたのと、神々の仕業である極めつけの寒さで軽く風邪を引いてしまった。急いで白いマフラーを首に巻く。鏡に映った自分の顔がまるで病人みたいで吹く。


ちなみに奈美さんはサロンのこと。
擬人化したいくらいそのサロンは心地よかったのだ。